遙かなる時空の中で 和歌
latest #21
第一章
https://images.plurk.com/2Yth376TU2djxUT9cw2vgB.jpg https://images.plurk.com/6mVrZCCFW0vrEG0UYgZl4Z.jpg https://images.plurk.com/455cyPAhVZHuG4yyGgonhF.jpg

春の野に わかなつまむと 来しものを
ちりかふ花に 道はまどひぬ

春の野に若菜を摘もうとやって来たが、進んでゆくうちにどこからともなく花が散ってきて、
それがだんだん増えてゆき、最後には道もわからなくなってしまった。

紀貫之 古今和歌集 巻二 春歌下 歌番号 116 

from 櫻花苑
青龍の章
https://images.plurk.com/3afRoTd8lqY3PG903BKlYC.jpg
寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた

霞立つ 春をの山べは とほけれど 
吹きくる春(風)は 花のかぞする

霞が立つ春の山辺は遠いけれど、吹いてくる風は花の香りがする。

在原元方 古今和歌集 巻二 春歌下 歌番号 103 

とほけれど>遠いけれど

from お部屋
朱雀の章
https://images.plurk.com/2gOEremoxKgpPBYMP6HBpf.jpg
花ざかりに京を見やりてよめる

みわたせば 柳桜の こきまぜて 
宮こぞ春の 錦なりける

見渡せば、柳と桜を取り混ぜて、都は春の錦のようだ。

素性法師 古今和歌集 巻一 春歌上 歌番号 56

こきまぜて>取り混ぜて

from お部屋
立即下載
白虎の章
https://images.plurk.com/7tZ7lposvYs9fKzMiiZ5bN.jpg
やよひにうるふ月ありける年よみける

さくら花 春くははれる 年だにも
人の心に あかれやはせぬ 

桜花よ、春が一ヶ月加わった今年だけでもせめて、人の心に満足だと思われるほど咲いていて欲しい。

伊勢 古今和歌集 歌番号 61 巻一 春歌上

from お部屋
玄武の章
https://images.plurk.com/6S1nJewjq1f3YK73hI9oG2.jpg
雲林院にてさくらの花の散りけるを見てよめる

桜ちる 花の所は 春ながら
雪ぞふりつつ きえがてにする

桜が散る花の林を見れば紛れもない春であるのに、地面では雪が降り積もってはなかなか消えないでいる。

承均法師 古今和歌集 巻二 春歌下 歌番号 75

from 千人万首
天のシナリア
https://images.plurk.com/4zpmloZDgDftiYHhiYdI7f.jpg
友の東へまかりける時によめる

白雲の こなたかなたに 立ちわかれ
心をぬさと くだくたびかな

白雲のこちらとあちらに別れてしまう、心を幣のようにくだくように別れのつらい旅である。

良岑秀崇 古今和歌集 巻八  離別歌 歌番号  379

ぬさ >道中の安全を祈願する時に使う、布や紙などと小さく切ったもの(幣)

from お部屋
天のシナリア
https://images.plurk.com/5BB4OXAUqCPQ53RI9RyIcl.jpg
山崎より神なびのもりまで送りに人々まかりて、かへりがてにして別れ惜しみけるによめる

人やりの 道ならなくに おほかたは
いきうしとひて いざ帰りなむ

赴任でも左遷でもなく、自分のために行く旅なのだから、こうして別れを惜しまれると、もう気持ちの大部分は 「行きたくない」と言って 「さあ帰ろう」という気分になる。

源実 古今和歌集 巻八  離別歌 歌番号  388

人やりの> 人に強制されて行く
おほかたは>だいたいのところ (大方は)

from お部屋
天のシナリア
https://images.plurk.com/2AfbnOwdjurbxFle80IMjw.jpg
人のむまのはなむけにてよめる

をしむから こひしきものを 白雲の
たちなむのちは なに心地せむ

目の前にいて別れを惜しんでいる時から恋しいものを、いなくなってしまった後はどんな心地がするだろう。

紀貫之 古今和歌集  巻八  離別歌 歌番号  371

from お部屋
天のシナリア
https://images.plurk.com/52JuJG6kJ43h1c4iXrGk6S.jpg
しひて行く 人をとどめむ 桜花
いづれを道と 迷ふまでちれ

止めても行ってしまう人を留めたい、桜花よ、帰る道がわからなくなるほどに散ってほしい。

読人知らず 古今和歌集  巻八  離別歌 歌番号 403

from お部屋
地のシナリア
https://images.plurk.com/3l9bCz1Bv7OwU0EYpBV5yN.jpg
いのちやは なにそはつゆの あだ物な 
あふにしかえば をしからなくに

命、それが何だというのか、所詮、露のようにはかないものであるのだから、逢うことに替えられるなら惜しくはないのに。

紀友則 古今和歌集  巻十二 恋歌二 歌番号 615

なにぞは>何ものか
あだもの>はかないもの (徒)

from お部屋
地のシナリア
https://images.plurk.com/5xCuAdPXiSSvolKtPcz15e.jpg
人を別れける時によみける

わかれてふ 事はいろにも あらなくに
心にしみて わびしかるらむ

別れということは色でもないのに、心に染みて辛いものだな。

紀貫之  古今和歌集  巻八 歌番号  381

てふ>と言ふ
なくに>ではないのに

from お部屋
地のシナリア
https://images.plurk.com/2gfzXaxxFofhlp13qf5EI3.jpg
源の実がつくしへ湯あみむとてまかりける時に、山崎にて別れ惜しみける所にてよめる

いのちだに 心にかなふ 物ならば
なにか別れの かなしからまし

命さえ、心のままになるものならば、何で別れが悲しくありましょうか。

白女  古今和歌集  巻八 歌番号  387

だに、さへ>せめて・最低限

from  お部屋
地のシナリア
https://images.plurk.com/7q9eDQGuCNiVsS5fuGk0hD.jpg
限りなき 雲ゐのよそに わかるとも
人を心に おくらさむやは

はてしない雲の、そのまた遠くに別れても、心の中ではあなたを遠い場所に置き去りにするものか。

読人知らず 古今和歌集 巻八 歌番号 367

雲ゐ>雲の遠く
よそに>離れて
おくらす(後らす)> 後に残してゆく
やは> 詠嘆のニュアンスを持った反語

from お部屋
終章
https://images.plurk.com/53LcLMBV9F5i5kNcbjQCod.jpg
内侍のかみの、右大将藤原の朝臣の四十の賀しける時に、四季のゑかけ
るうしろの屏風にかきたりけるうた

山たかみ くもゐに見ゆる さくら花
心の行きて をらぬ日ぞなき

山が高いので、雲のある場所に見える桜花、とうてい辿り着つけないけれど、心がそこに向かって折ってこようとしない日はない。

凡河内躬恒  古今和歌集  巻七  賀歌 歌番号  358

山高み>山が高いので 雲ゐ>雲、あるいは雲のある場所

from お部屋

"山高み":「山+高+み」で「高」は形容詞「高し」の語幹、「み」は理由を表す接尾語である。
https://images.plurk.com/67REhPRNqFnBFYyujlsgrN.jpg
音羽山を越えける時にほととぎすの鳴くを聞きてよめる

音羽山 けさ越えくれば ほととぎす
こずえはるかに 今ぞ鳴くなる

今朝、音羽山を越えた時に、ちょうど梢の高みでホトトギスが鳴いた。

紀友則  古今和歌集 巻三 夏歌 歌番号  142

from お部屋
永泉恋愛第四階段
https://images.plurk.com/4X0KBwmnH66hwFwwJHPGv.png
たよりにも あらぬおもひの あやしきは
心を人に つくるなりけり

不思議なことに、心は手紙でもないのにあの人に思いを 「つけて」しまったよ。

在原元方  古今和歌集  巻十一  恋歌一 歌番号  480

つくる>(心を)寄せる、 (文を)託す

from お部屋
アクラム恋愛第四階段
https://images.plurk.com/1IhlqPr2EuY7eUbdXrcuTg.jpg
うつせみ 

浪の打つ 瀬見れば玉ぞ 乱れける
ひろはばそでに はかなからむや

浪の打ちよせる瀬を見ると、水が玉のように乱れている、でもそれを拾っても袖の中ではかなく消えてしまうのではないだろうか。

在原滋春 古今和歌集  巻十  物名 歌番号  424

"はかなからむや" は 「はかなから+む+や」で 「はかなし」の未然形+推量の助動詞「む」の終止形+疑問を表す終助詞「や」。

from お部屋
友雅恋愛第一階段
https://images.plurk.com/12durnkED1nsv2iDaEo8Pg.jpg

さくらのごととく散る物はなし、と人のいひければよめる

さくら花 とくちりぬとも おもほえず 
人の心ぞ 風も吹きあへぬ

はかない桜の花でさえ風に吹かれて散るのに、人の心は風が吹きすぎてしまわないうちに変わってしまうと、人の心の変わりやすさを強調して詠まれている。

紀貫之 古今和歌集  巻二  春歌下 歌番号 83

思ほえず>思われない (思ほゆ)
あへぬ>~できない

from wakastream
お部屋
友雅再訪問通常一段階後
https://images.plurk.com/23agm75Iy5IvNQAyea28nZ.jpg
春のはじめによめる

春やとき 花やおそきと 聞きわかむ
うぐひすだにも 鳴かずもあるかな

暦の春が早すぎるのか、花が遅れているのか、それを判断しようにも、基準としたいウグイスの声さえ聞こえない。

藤原言直 古今和歌集  巻一  春歌上 歌番号10

とき>早い

from お部屋
友雅急展開一段階
https://images.plurk.com/2HbjygJ18okO7ylJ2cfjnf.jpg
さつき待つ 花たちばなの 香をかげば 
昔の人の 袖の香ぞする

五月を待つ花橘の香をかぐと、昔の人の袖の香りがする。

読人知らず  古今和歌集  巻三  夏歌 歌番号139

from お部屋
友雅恋愛第二階段
https://images.plurk.com/1YCNrrLVD3954MxrgQqCMQ.jpg
春の色の いたりいたらぬ 里はあらじ
咲ける咲かざる 花のみゆらむ

春がやってくる里、やってこない里ということはないだろうに、どうして咲いている花も咲いていない花もあるのだろう。

読人知らず  古今和歌集  巻二  春歌下 歌番号93

"あらじ" の 「じ」は打消しの推量を表す助動詞。

from お部屋
back to top