masaka says
サラ・ベイクウェル/向井和美 訳「実存主義者のカフェにて」を読んだ。古物扱いされる実存主義だが、ものごとの「本質」ではなく実際に存在するひとりひとりの人間存在に焦点を当てて、その自由とそれに対応する責任を考え、あるがままを記述する―という「主義」が本当にリアルであった戦争期から戦後初期の状況とそこで活躍した哲学者たちの活動を記すことで、新たな問題が続出する現代にはスカしたポストモダンよりもむしろ実存主義が有効であることを認識させてくれる。サルトルとボーヴォワール、その周囲のメルロ=ポンティ、カミュらが実に生き生きとしており(キアスムはメルロ=ポンティの造語)、フッサール、ハイデッガーの現象学も具体的なものとして立ち現れ、わくわくする